代理懐胎については、日本産科婦人科学会は代理懐胎が身体的危険性と精神的負担を伴うことを理由として認めていない。また、厚生科学審議会生殖補助医療部会や日本学術会議も安全性に十分配慮するという観点から容認できないとしている。代理懐胎には医学的問題のみならず、倫理的および社会的側面より大きな問題提起されている。平成14年に厚生労働科学研究において、広く国民に対して第三者を介する生殖補助医療についてアンケート調査を実施した。その代理懐胎に対する国民の考え方の調査結果を図に示す。
それによれば、もし妻に子宮が無かった場合、自分達が代理懐胎を利用するかどうかの質問に対しては、利用したいと答えたものはわずか8.6%で、配偶者が賛成したら利用したいとしたものは34.7%であった。一方、一般論として代理懐胎は認められるかどうかの質問に対しては、認めてよいとするものが45.8%で、認められないとする22.0%を大きく上回っている。国民は、遺伝学的に両親を受け継いだ子どもを持つ権利を尊重しており、半数の人々が体外受精型の代理懐胎を実施しても良いと考えている。これらのデータは産婦人科医や小児科医のデータとは異なり、妊娠・分娩に対するリスクの評価ができていないことが関与しているのかもしれない。一般国民に代理懐胎による妊娠や分娩の危険性があまり認知されていないのは残念である。
(生殖医療と生命倫理:吉村泰典)
(吉村 やすのり)