これまで日本人が代理懐胎を実施してきた国は、アメリカがほとんどであった。アメリカでは代理懐胎の実施の是非は州法によって決められている。米国での代理懐胎では、子ども誕生までに最低でも1,500万円前後が必要となることもあり、最近ではアジア諸国で実施されることが多くなってきている。以前は代理懐胎の中心はインドであり、日本人の夫婦が代理懐胎を依頼したが、離婚していたため子どもが日本に帰国できない事件が起こったり、海外からの代理懐胎の依頼が殺到したりして、インド国内で問題視されるようになったりした。そのため、同国での規制が強まり、現在ではもっぱら規制法のない、医療水準も良好なタイに中心が移っている。
代理懐胎の依頼は、もっぱら高齢妊娠が多くなる卵子提供と異なり、年齢には幅がある。外国での出生届を日本に持参すれば、代理懐胎の事実は知り得るはずもなく、役所は出生届を受理する場合がほとんどである。そのため代理懐胎で生まれた子どもであるかどうかの把握はまったくできないのが現状であり、どれくらいの数の代理懐胎が海外で実施されているのかは全く不明である。国際的な代理出産のエージェントが東南アジアに進出し、赤ちゃんを求める外国人カップルに対し手広く仲介をしている。代理出産を引き受けるのは、東南アジアの国々の家庭に借金を抱える貧しい女性ばかりである。貧しさが由に、代理出産の意味もわからず引き受ける女性が多いと聞く。こうした商業主義的な代理懐胎は、果たして許されて良いのか。しかし一方では無償で代理懐胎を引き受けてくれる女性はいるだろうか。医療者やクライエントの論理だけでなく、広く国民的な議論が必要である。