厚生労働省は、2013年の概要の医療費が40兆円に迫る勢いであることを発表した。介護費用を含む保険医療費は、GDPの1割を超し、OECDの平均を上回る見通しである。膨張の主因は高齢化であり、75歳以上の1人あたりの医療費は年間92万円にも及ぶ。超高齢化者社会の到来を前に、今後も高齢者の医療費増加が止まらない。医療費の単価も上昇し、1日あたり1人1万5,000円前後である。抗がん剤などの新薬や新型医療機器や新しい手術が増えたことによる。
日本医師会は、日本の医療費の総額は諸外国に比べ必ずしも大きくないというが、英国やイタリアなどの国々を上回り、ドイツやフランスに迫る勢いである。このままでいくと、医療費の膨張が国の経済成長を上回るペースで進むと考えられる。医療費を抑制するためには、後発医薬品の使用や混合診療の仕組みを変え、高額な医療を保険の適用から外すといった政策転換が必要である。さらに病院の集約化や病床数の見直しも急務である。
(2014年8月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)