理科学研究所などのチームは、9月12日初めてヒトiPS細胞を用いた臨床研究を実施した。目の難病である加齢黄斑変性の患者の皮膚から作製したiPS細胞を網膜の組織に変化させ、患者に移植した。2007年ヒトiPS細胞が樹立されてから、ヒトの体内に移植されたのは初めてである。この病気は目の網膜の中心部に黄斑ができ、不要な血管により網膜が損傷される病気で、物がゆがんで見えたり、最悪の場合は失明したりする。
現段階では、iPS細胞が移植されたところであり、この手技が有効であるかどうかは全く未知数である。今後は数年間にわたり、シートや眼球の状態などを定期的に調べ、安全性を確認してゆくことが必要となる。さらに視力の変化や病気の進行抑制なども評価する必要がある。またiPS細胞は、癌化したり目的外の細胞になったりするリスクがあるため、特に注意を払うことが大切である。
(2014年9月13日朝日新聞)
(吉村 やすのり)