妊娠中の超音波検査で胎児の異常がみつかったら-Ⅱ

臨床の現場では、超音波検査などで分かっていることを説明しないということはできません。現在の医療では患者の自己決定権や自律性が重視されており、クライエントである妊婦が胎児の状況についても知る権利が尊重されなければなりません。医療倫理における原則の中の「個人の福祉、幸福を守ることを最優先させ、彼らの健康に寄与すべく最善を尽くす」という恩恵の原則を、生後の重度の障害や予後不良が予想される場合にどのように保障するかが問題となります。

 現時点では統一的な見解はありません。体外での生存が可能となる妊娠22週以前と以降に分けて、実地臨床では対応するのが良いと思います。妊娠22週以前であれば、染色体異常による多発奇形で出生後の生命的予後が極めて不良の場合、クライエントが選択的中絶を希望されることもあります。その際にはクライエントの意志が尊重されるべきです。妊娠22週以降であれば、小児科医や小児外科医と相談し、積極的な治療を考えることが基本となります。しかし、その重篤度や予後によっては、侵襲を伴う積極的な治療を行うことを手控える待機見取り療法を、クライエントや家族に選択肢として提示することも必要になるかもしれません。

 いずれにしても、出生前に胎児の疾患についてクライエントや家族に説明する際には、その疾患をよく理解した小児科医も参加することがきわめて重要となります。生後の重度の障害や予後不良が予想される疾患であっても、実際にその疾患を診療した経験のある医師が、生まれた子どもの具体的なイメージを持って話すことが大切です。

(吉村 やすのり)

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