近年の結婚年齢の上昇等に伴い、特定不妊治療を受ける方の年齢も上昇しており、一方で、高年齢での妊娠・出産は様々なリスクが高まるとともに、出産に至る確率も低いなることが医学的にも明らかになっています。そのため、不妊助成を受けるカップルの身体的・精神的負担の軽減や、より安心・安全な妊娠・出産に資するという観点から、支援の在り方が再検討されました。特定不妊治療を行った場合の生産分娩率は年齢と共に低下し、流産率は年齢と共に上昇し、40歳以上では30%、43歳では50%を超え、分娩に至る割合は50回に1回にまで減少しています。妊娠合併症の頻度は、加齢とともに増加します。安心・安全な妊娠出産のためには、助成の対象は40歳未満とするとの考え方もありますが、助成を受けている女性の32.7%が40歳以上であることを考慮しますと、助成の対象が43歳未満とすることが適当であると考えられました。
特定不妊治療を受けたクライエントの累積分娩割合(不妊治療後に分娩に至った割合)は、治療回数が6回までは回数を重ねるごとに明らかに増加する傾向にあります。しかしながら、6回を超えるとその増加傾向は緩慢になり、分娩に至ったクライエントのうち約90%は、6回までの治療で妊娠・出産に至っています。また39歳までは、治療を重ねるにつれて累積分娩割合は増加しているが、40歳以上の分娩の割合は、治療回数を重ねてもほとんど増加していないことも示されています。
これらの医学的知見を踏まえ、通算助成回数については年齢による差を設け、新規に助成を受けた際の治療開始日の年齢が40歳未満の場合には、通算6回とされています。新規に助成を受けた際の治療開始日の年齢が40歳以上の場合には、諸外国における助成回数なども参考にして、通算3回とすることが適当であるとしています。今回の見直しに当たっては、特定不妊治療を受けるクライエントの身体への負担の少ない治療法等が選択できるようになってきたことを踏まえ、相対的にリスクが少なく、出産に至る確率は高い、より早い段階での治療の機会を確保する観点から、年間の助成回数については、制限を設けないこととすることが適当であるとされました。
(吉村 やすのり)