父親が、子どもの引き渡しを求め、家庭裁判所に調停や審判を申し立てるケースが増えています。最高裁判所の調査によれば、この10年で父親の申し立てが7割増えて父母の申立件数が逆転し、父親が母親を上回る状況が続いています。父親が外で仕事をし、母親が育児をするという家族の形が変わってきたことが背景にあります。
日本では、結婚中は父母の共同親権、離婚後は一方の単独親権とされてきました。子の引き渡しは、離婚前の別居中に折り合わない場合や、離婚後に親権者ではない親が子を連れ去った場合などに、家庭裁判所へ調停や審判を申し立てることができます。一般的にはまず調停に申し立て、まとまらなければ審判の手続きに進みます。平均審理期間は、2012年は6.3カ月でしたが、2022年は9.1カ月に延びています。
離婚前に母親が子を連れて別居することは昔からありましたが、父親が異議を唱え、子の引き渡しを申し立てるケースが増えています。裁判所は、子の年齢や性格、就学の有無のほか、監護実績や親子の関係性などを踏まえて判断します。調査官は、両親や子らに会い、必要な調査をして裁判官に報告しますが、父親も育児を担うようになり、父母の間で差がなくなってきています。
(2024年5月8日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)