子育て支援の先進例とされる国の多い欧州で少子化が再加速しています。2023年は、フィンランドやフランスで出生率が過去最低水準となっています。価値観の多様化や社会・経済の先行き不透明感が広がっています。
フィンランドでは、2023年にひとりの女性が生涯に産む子どもの数の見込みを示す合計特殊出生率が1.26と低下しています。前の年に比べ0.06ポイント低下し、1776年以降の最低水準を2年連続で更新しています。妊娠期から手厚く親子をケアするネウボラの開設など、子育て支援の充実で知られていますが、直近のピークだった2010年の1.87に比べて3分の2の水準にまで下がり、日本の2022年と同じ数値になっています。
フランスでも低下が続いています。2023年は前年から0.11ポイント下がって1.68です。第2次世界大戦後では最低水準です。フランスは、出生率が1990年代前半まで低下し続けた後、給付拡充や労働時間の短縮、男性の育児参画後押しで2010年には2.03まで持ち直していました。しかし、2011年以降は新型コロナウイルス禍の影響があった2021年を除き、下落傾向が続いています。
フィンランドでは、子どもを全く持たない人が増えており、家族手当を増やせば解決するというものではないと指摘されています。フランスでは、カップルに地球温暖化や高インフレなど経済の不確実性が子どもを持ちたくない、または少なくしたいという希望があります。親にならなくても前向きで充実した人生を選べるとう価値観の広がりも背景にあります。フィンランドは、2021年に出生率の長期的な目標を1.8とする人口政策のガイドラインを公表し、人口政策に関する報告書の策定を予定しています。フランスでは、マクロン大統領が1月に、計6カ月の出産休暇を取ると最長3歳までの育児休暇は短くなる一方、給付は大幅に増やす案を発表しています。
他の先進国を見ても、米国では2023年の合計特殊出生率が1.62と1950年以降で最低を記録しています。少子化は特に東アジアで顕著です。日本は2023年の出生数が前の年から5.1%減の75万8,631人で過去最少を更新しています。韓国も2023年に出生率が0.72と最低を更新し、2025年には0.65になると推計されています。
(2024年5月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)