京都大学iPS細胞研究所の研究グループは、全身の筋肉が徐々に衰えるALS(筋萎縮性側索硬化症)について、治療薬候補を患者に投与する第2段階の臨床試験で一部の患者で病気の進行を抑制したと発表しています。患者のiPS細胞を使って既存薬の中から治療薬候補を見つけました。
ALSは、運動神経の障害を伴う難病で、筋肉が徐々に動かなくなってしまいます。国内には約9,000人の患者がいるとされ、重症の場合には発症から数年で人工呼吸器を付けたり、亡くなったりする場合があります。進行を遅らせる薬はありますが、根本的な治療法はありません。
iPS細胞でALSの細胞を再現し、この細胞に1千種類以上の化合物を投与して効果のあるものを探し、最終的に慢性骨髄性白血病薬のボスチニブを治療薬候補としました。2019~2021年に実施した第1段階の治験では安全性と、一部の患者で病気の進行を止める効果を確認していました。
iPS創薬は、iPS細胞の応用として、再生医療と並び最も注目されている手法です。患者本人のiPS細胞から体の様々な細胞をつくれる性質を生かし、試験管内で病気を再現して、効く可能性のある薬の候補をしらみつぶしに調べられます。
(2024年6月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)