若年層が国家公務員を志望しなかったり、早期に離職したりする傾向に歯止めがかかりません。人事院によれば、キャリア官僚と呼ばれる国家公務員総合職の採用試験の志願者は、2023年度に1万8,386人と2012年度に比べて27%減少しています。採用10年未満の退職者も、2018年度から3年連続で100人を超えています。現状が続けば、質・量ともに人材が不足し、国民の安全な生活に支障を来たし、国家の衰退にもつながりかねない状況です。
日本の国家公務員制度は、長期的視点で人事を運用してきました。民間で人材の流動性が高まり、若年層の志向に合わなくなっています。フランスでは、技能や専門性を高めて業務により貢献できるようになれば、年次に関係なく役職や報酬を上げるシステムが定着しています。米国は、局長以上の幹部は政治家の裁量で任免する政治任用の形をとっています。キャリアのどの段階でも、原則外部から採用できる開放型と言えます。英国は、個別の案件ごとに利益相反の有無を確認したうえで兼業を容認しています。
職務内容を明確にして成果で処遇するジョブ型の働き方が打開のカギを握っています。ジョブ型の浸透には報酬の体系の見直しも欠かせません。2023年度に採用した国家公務員の8割以上が、仕事の魅力を高める対策に給与水準の引き上げを挙げています。
(2024年5月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)