2050年には単独世帯が44.3%に達し、特に一人暮らしをする65歳以上の人が男性は450万人、女性は633万人になると推計されています。一人暮らしの高齢者が1千万人を超える社会がもうすぐ到来します。
2020年時点でも、高齢一人暮らし男性の未婚率は33.7%にのぼっていますが、2050年には59.7%と6割近くに達します。女性でも未婚率が11.9%から30.2%となり、人数でみれば未婚単身者は3倍以上になります。さらに既婚者でも、子どもがいる人の割合は低下傾向にあります。現在の一人暮らし高齢者は、別居でも子どもやきょうだいなど近親者がいるケースが大部分ですが、今後は近親者が一人もいない高齢単身者が増えます。
現在、離婚数は結婚数の4割程度まで上昇しています。さらに再婚も増え、近年は結婚の4組に1組はどちらかが再婚となっています。一度結婚しても、それが続くのか、離婚に終わるか、再婚するか、それがいつ起きるかが予測できない状況になっています。生涯未婚・離婚は、若い人にとってかなりの確率で起きるリスクになっています。社会保障・社会福祉制度は、ライフコース上のリスクの高まりに対応しきれていません。
現在の日本の社会保障制度は、標準的ライフコースをとる人、つまり結婚して離婚せず、収入が安定した男性に扶養されていることを前提に構築されています。家族においても雇用においてもリスクが高まっている時、この制度からこぼれる人が増えています。単身高齢世帯増大の裏側には、従来の年金制度では十分に包摂されない人々の増大があります。この事態は、皮肉なことに未婚化や少子化、離婚の増大に結びつきます。
老後を迎えた時に、未婚でも離婚・再婚していても、非正規雇用やフリーランス、自営業でも、子どもがいてもいなくても、人並みの生活ができるようにするべきです。今の年金など社会保障制度を、個人単位に抜本的に構築し直す必要があります。そうしなければ、若者は不安の中でますます結婚や出産に慎重になり、少子化が深刻化します。
(2024年6月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)