国立大学で、理工系学部を中心に入試に女子枠を設ける大学が約4割と急増しています。導入済みとしたのは、東京工業大や熊本大など12大学です。導入時期は名古屋工業大の一部が1994年度入学者向けの入試からで、2023年度入試が3大学、2024年度入試で始めたのが8大学でした。導入決定は、京都大や千葉大など17大学で、2025年度入試からが14大学、2026年度が3大学です。
日本の学部生の女性割合は、1993年度の31%から、2023年度は46%に増えました。工学系は6%から16%に増えましたが、女性が極端に少ない状況が続いています。女子高生や保護者向けの説明会を開き、学生の目標となる女性教員を増やす大学は多くなっています。しかし、思うように増えないため、女子枠導入に踏み切っています。
女子枠は、男子学生の合格者が減ることになるため、公平でないという意見もあります。女子の進路の幅が広がるなどと歓迎する声の一方、募集定員を男女で区別することこそが差別といった意見もあります。しかし、女性の活躍が業績向上の要因の一つになった、業績向上はみられないが組織が活性化するなど変化がみられるといった調査結果もあります。
大学の理系分野に女子が進学しやすい環境が広がることは、多様性の観点からも生徒にとっても国にとっても良いことです。しかし、女子は理系といっても、資格の取れる医学や薬学系などへの希望が多くなっています。多くの生徒も保護者も教員も、特に工学系について大学の授業や研究、卒業後の仕事のイメージを持ててないのが実情です。
(2024年6月14日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)