不健康な量のお酒を飲む女性が増え、特に50代で増加が目立ちます。女性が本格的に社会進出し、仕事も飲み会も男性並みにこなしてきた世代です。東京都の調査によれば、生活習慣病のリスクを高める量のお酒を飲む女性の割合が男性を上回っています。女性は、一般的に男性に比べてアルコールの分解速度が遅く、身体に大きな負担がかかりやすくなっています。女性に多い非正規社員などの健康診断の機会も不十分で、問題が見逃されるおそれもあります。
厚生労働省が、今年2月に発表した飲酒ガイドラインでは、生活習慣病のリスクを高める飲酒量について、1日あたりの純アルコール量で女性は20g以上と、男性の40g以上の半分としています。ビールだと中ジョッキ1杯、ワインだと小グラス2杯程度にあたりますが、十分に周知されているとは言えません。
生活習慣病のリスクを高める量の飲酒をしている人の割合は、2009年から2019年の10年間で男性全体では減ったのに対し、女性全体では増えています。年代別では女性は40代で増加に転じます。特に50代の女性で大幅に上昇し、8.9%から16.8%へとほぼ倍増しています。男性の平均14.9%をも上回っています。対照的に20~30代女性は減っています。元々妊娠や授乳などで飲酒機会が少ないのに加え、昨今の若者を中心とする日本人の酒離れの傾向が強く出ています。
生活習慣病のリスクを高める量の飲酒をしている人の割合は、2021年度に女性全体で17.7%に上り、2011年度以来、初めて男性全体を上回りました。不健康な飲酒は女性を蝕み、新型コロナウイルス禍が女性の飲酒の機会を増やし、アルコールが関連する病気を増加させた可能性もあります。コロナ禍で肝疾患と膵炎による女性の入院が急増しています。
同じ量の飲酒でも女性のほうが肝硬変など肝臓の病気や依存症に発展しやすく、乳がんの発症リスクも高めます。家での飲酒はブレーキがかかりにくく、在宅勤務と家事の両立でストレスを抱え、酒量が増えた人が多くなっています。
(2024年6月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)