近年の学生は、内向き志向で、米国への日本人留学生の数は、2000年以降減少傾向が進んでいます。このところ拍車をかけているのが円安です。記録的な円安が続き、留学の費用が段違いに上がっています。経済的な理由で海外での学びを諦める学生がさらに増えれば、国際競争力が低下しかねない状況に陥ります。
政府の教育未来創造会議は、昨年4月に出した第2次提言で、海外に留学する学生を2033年までに年50万人に増やす目標を掲げています。新年度予算では、日本学生支援機構の留学者向け奨学金の枠を増やし、中長期や学位取得のための留学の支援に力を入れていますが、円安や物価高を踏まえた目立った支援はできていません。
大学間の交換留学は期間が短いため、為替の影響は小さいと思われますが、海外の大学での学位取得を目指す場合は影響が大きくなります。学位取得型の留学生は、長期間留学先についての知識を深め、人的なネットワークも築けます。進学を避ける人が増えれば、国際人材が減り、日本の国際競争力が低下してしまいます。
政府が奨学金などの支援態勢を拡充したり、多様な進学先を検討できるように情報を提供したりすべきです。円安で好調な民間企業も、留学生に対する支援を考えるべきです。
(2024年6月18日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)