OECDの発表によれば、1975年生まれで子どものいない女性が日本では28.3%と、比較可能な26カ国で最多でした。1955年生まれで子どもがいない女性の割合と比べて16.4ポイントも上昇しており、日本の増加幅が最も大きくなっています。OECDの平均は、16.2%でした。先進国が中心の対象26カ国のうち、日本が最も高く、スペインの23.9%、イタリアの22.5%が続いています。50歳時点で子どもがいない女性の割合を指す生涯無子率では、1955年生まれの日本の女性は11.9%、1935年生まれは11.2%でした。
出生率の維持には、ジェンダー平等や仕事と育児の公平な分担を進めることが大切な条件となっています。日本では、固定的な性別役割分担意識がなお根強いため、女性に家事や育児の重い責任がのしかかっているのが少子化の一因になっています。日本では、男性も女性も労働市場で自らを確立したいと望んでいます。良いパートナーと出会えず、結婚が難しくなっています。
生涯子どもがいない女性増加の背景には、1986年に施行した男女雇用機会均等法による社会進出に対し、国や企業の支援が追いつかなかったことがあります。1965年頃以降に生まれた女性は、均等法第一世代と呼ばれ、総合職を含め女性の働き方は多様になりましたが、退職して出産か、子どもを持たずに働き続けるかの選択を迫られる傾向がありました。
近年、状況は変化しています。育児休業制度や保育所の整備という両立支援は徐々に進んできたものの、低賃金や雇用の不安定といった経済的な理由で結婚や出産をためらう若者は少なくありません。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によれば、2005年生まれの女性では生涯無子率が33.4%に達する見込みです。
2022年の合計特殊出生率は、OECD加盟国の平均が1.51で、日本は1.26でした。出産年齢の平均は30.9歳、日本は32.2歳でした。世界全体で少子化と晩産化が進んでいます。世界的な傾向として、男女の雇用率の改善や育児休暇・保育に対する公的支援の充実は出生率の上昇に寄与したと指摘されています。住宅価格の高騰やフルタイムで働く女性の労働負荷などは、逆に出生率の押し下げ要因になっています。
(2024年6月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)