美容医療トラブルの急増

脱毛や整形といった美容医療を巡る健康被害の相談が急増しています。インターネット上に虚偽広告を出す業者や、医師が常駐していない疑いがあるクリニックによるトラブルが目立っています。国民生活センターによれば、2023年度の美容医療に関する消費者の相談件数は、前年度比1.6倍の6,255件でした。2009年度以降で最多となり、5年前の3倍になっています。
相談は、新型コロナウイルス感染が広がった2020年度からの増加が顕著になっています。在宅時間が延び、消費者の関心や属性にあった内容を配信するターゲッティング広告など勧誘手法が多様化しました。施術や薬の効果を偽った広告をみて被害に遭った人もいます。美容医療の多くは、公的医療保険が適用されず全額自己負担の自由診療で、保険診療と比べて規制は緩くなっています。
一般社団法人を設立すれば、代表が医師でなくても美容医療を手がけることができます。設立も登記といった簡素な手続きで可能です。医療法は、原則としてクリニックに管理者となる医師の常駐を義務づけ、他の施設の院長などを兼務できないようにしています。医師が代表を務める医療法人の場合、運営するクリニックで院長が不在になる事態は起こりにくくなっています。しかし、一般社団法人の場合、院長がいるとうたいながら、実際は確保せずに開業したと疑われる例がみられます。
一般社団法人が運営する美容クリニックには、他機関の医師から名義を借り、医師が常駐していないとみられる施設が一定数あります。医師法は医師以外の医療行為を禁じ、違反すると3年以下の懲役か100万円以下の罰金などが科される可能性があります。医師の名義借りは、医療法が20万円以下の罰金と規定しています。名義を借りる施設は、医療体制が脆弱になり、医師でない者による違法な施術や術後の健康被害も起きやすくなっています。

 

(2024年6月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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