最高裁大法廷は、1948年から1996年まで施行されていた旧優生保護法の下で、不妊手術を強制されたのは立法時点で違憲だったとし、国に賠償を命じる判決を言い渡しました。
旧法の違憲性について、不良な子孫の淘汰を目的に不妊手術を認める規定は、当時の社会状況をいかに勘案しても正当化できないと指摘しています。生殖能力を失わせるという重大な犠牲を強制し、憲法13条が保障する自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由を侵害するとしました。障害がある人らだけを手術の対象としたのは差別的取り扱いで、法の下の平等を定めた憲法14条にも違反するとしました。
当初から違憲と評価される立法で手術を進めた国の責任は極めて重大で、1996年の旧法廃止後も被害補償をしなかった点などをふまえ、時間の経過で国が賠償責任を免れるのは、著しく正義・公平の理念に反し、到底容認できないと判断しました。
旧優生保護法は、1948年に不良な子孫の出生防止などを目的に議員立法で成立しました。遺伝性疾患や障害などがある人に本人の同意なく不妊手術の実施を認めていました。1996年に、強制不妊手術に関わる条項は削除されました。国によると、旧法下の手術は約2万5千件にも達しています。
(2024年7月4日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)