日本の科学研究力の低下に歯止めをかけるため、国の科学研究費助成事業(科研費)を現状の2倍に増額するよう、複数の主要な国内学会が共同で署名活動を始めます。国から大学へわたる資金の減少や、物価高、円安による実質的な目減りなどを受け、研究費の不足が常態化していることが背景にあります。
科研費は、あらゆる分野の研究者が研究アイデアを応募し、審査を経て助成されます。最もベーシックな研究資金で、iPS細胞など後にノーベル賞が贈られたような新発見も、研究の初期には科研費で支えられていました。競争を経て得られる科研費と、国立大などへの運営費交付金が、多様な研究を下支えする土台となっています。
科研費の年間総額は、年度当初額で2,400億円程度と横ばいが続いてきていました。運営費交付金は、2004年の国立大の法人化以降、減少傾向にあります。頼みの綱として科研費への応募が集中し、競争の激化に加え配分が減っています。
(2024年7月1日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)