太陽光パネルのリサイクル

太陽光の導入は、2012~2013年度だけで原発およそ8~9基分に相当する880万kwに上りました。最近の年間導入量の2倍近い水準です。国内の太陽光発電が広がる契機となったのは、政府が2012年に始めた固定価格買い取り制度(FIT)です。高価格の買い取りを確約した結果、企業や家庭の新設が急増しました。しかし。パネルの耐用年数は20~30年とされ、FIT開始から20年を過ぎる2030年代に次々と廃棄される見込みです。
普及が急ピッチだった分、廃棄量のピークも高くなります。パネルの廃棄量について、経済産業省は年間17万~28万トン、環境省は年間50万~80万トンと推計しています。今は埋め立て処分するのが主流です。産業廃棄物の最終処分場は元々逼迫が見込まれ、全て埋め立てるのは限界があります。環境への配慮だけでなく、経済安全保障の観点で重要なレアメタルを回収するためにもリサイクルの取り組みは欠かせません。
最大の課題はコスト面です。リサイクル処理の費用は埋め立てに比べてコストが2倍かかります。2022年に事業者に廃棄費用の積み立てを義務づけたものの、埋め立てが禁止になれば必要な費用は膨らみます。リサイクルを義務づけた結果、悪質な業者による不法投棄が増えるような事態になっては元も子もありません。
買い取り価格は大幅に下がり、リサイクル義務化のような規制強化でコストは上昇が見込まれます。事業継続には逆風で今のパネルの廃棄後、撤退する事業者が出る可能性があります。2030年代に廃業が相次げば、せっかく普及した再生エネルギーの発電量に大きな穴があくことになります。

(2024年7月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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