賃上げは景気回復につながらないとの雇用優先という考えは、日本経済の長い賃上げ停滞を招き、わが国の給与水準は、先進国の中で低くなっていました。東証プライム上場企業の約1,300社の平均年収と業績の関係を見てみると、給与を上げた企業の強さが際立っています。2022年度の平均年収が3年前より10%以上高くなった企業は180社で、その間の売上高は平均48%増えています。約1,300社の平均の増収率を2倍超上回っています。
日本企業の給与はまだ低い状況にあります。米コンサル大手のマーサーによれば、米大手企業の課長級の年収は約22.5万ドル(約3,600万円)です。日本は半分以下で、韓国や中国よりも安くなっています。賃上げの勢いを加速しないと、優秀な人材は海外に流出してしまいます。
企業は成長と賃上げのサイクルを回していく中で時に道に迷います。業績も年収も上がる高循環型企業が、年収だけ高い低循環型になっては元も子もありません。目指すべきは、年収も上がり、高成長も持続する超循環型企業です。社員の努力や成果を適正に評価する報酬制度を通じて、社員がより成長する循環を生み出すことが大切です。人への投資の拡大こそ、日本企業が巻き返すための一歩です。
(2024年7月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)