妊娠・出産に関する悩み
妊娠SOS東京の調査によれば、10~20代の若年者が相談者の7割近くを占めています。少ないながらも40~50代からもご自身の妊娠についての相談があります。相談者の全てが、妊娠当事者の女性ではなく、パートナーが彼女の生理の遅れや避妊の状況を心配して問い合わせてくることもあります。7割が妊娠確定前の相談、つまり妊娠したかもしれないという相談です。
思いがけない妊娠で困っている相談者からは、3つの不在があるように思われます。包括的性教育の不在、関心を持ってその人を見てくれる人の不在、妊娠した途端男性の不在です。これらの不在を背景に、妊娠を知られることへの得体のしれない恐怖を相談者が持っているとも感じられます。そのことが相談者と社会を断絶することにつながります。
2009年に施行された改正児童福祉法では、特定妊婦が明記され、若年妊婦も含まれています。若年妊娠の人々の多くは、妊娠すべきではないという社会規範、自己責任論は根強くあります。親は子どもの味方になってくれるはずであるという幻想的な家族像を前提とした社会制度も、相談者の味方にはならないこともあります。若年妊娠した女性が、孤立することなく、自由に幸せに生きていくことができる社会を目指すことが大切です。
(母子保健 2024年7月号)
(吉村 やすのり)