全国の小中学校のプールに廃止の波が広がっています。多くは建設から40~50年経って老朽化が目立っており、大規模改修や建て替えを見送るケースが相次いでいます。人口減少を背景に、自治体の財政難から費用が捻出できないためです。市民プールの活用や水泳の授業の民間委託など、財政負担抑制と教育の両立へ向けた試みが出ています。
全国の学校のプールは、競泳人気に沸いた1964年の東京五輪も追い風として、1970年代を中心に普及しました。1968年には、学習指導要領の改訂で水泳が体育の授業に組み込まれ、高度経済成長などに伴うインフラ整備の一環で建設が一気に進みました。建設から半世紀ほど経って既存施設が限界を迎える中、毎年の水道代や水質管理費などに加わる改修費の負担の重さに加え、少子高齢化による児童・生徒の減少を受けて廃止が相次いでいます。
スポーツ庁の調査によれば、屋外プールの保有率は2021年度時点で小学校が87%、中学校が65%と、2018年度からそれぞれ1割前後減っています。人口減を背景に、民間のプールも将来的に減少が見込まれています。学習指導要領の改訂を含め、各地の実情を踏まえた対応が必要になります。
(2024年7月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)