不妊治療への支援

2022年4月に体外受精などの不妊治療が公的保険に適用されてから2年あまりが経過しました。制度を活用して治療する人が広がる一方、通院に伴う身体的な負担や精神的なストレスなどから仕事との両立を諦めるケースも多くなっています。従業員の望まない離職を防ごうと、企業は支援に乗り出しています。
しかし厚生労働省のアンケート調査によれば、不妊治療をしたことがある257人のうち、仕事と両立できずに退職した人、不妊治療をやめた人、雇用形態を変えた人の合計は、26%にのぼっています。4人に1人は両立を諦めています。断念した人の半数は、待ち時間など通院にかかる時間が読めないことなどを要因に挙げています。多くの人は通常の有給休暇やテレワークを使って治療しています。
不妊治療中の従業員に何らかの支援をしている企業は、3割弱にとどまっています。6割以上の企業は、不妊治療中の従業員がいるか把握できていません。当事者の中には会社に知られたくないという人もいます。特にキャリア志向の強い人は、自身の経歴や評価への影響を懸念して治療を公にしたくない傾向にあります。休暇は不妊治療に特定しない仕組みにするなど、制度作りは工夫が必要です。
厚生労働省は、不妊治療で使える休暇制度などを整備し、実際に従業員が利用した中小企業向けに助成金を用意していますが、取得実績はまだ多くありません。福利厚生を充実させるだけの経営体力がない事業者もあります。不妊治療離職を減らすには、国による後押しも欠かせません。

(2024年8月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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