養育費不払いへの対応

 厚生労働省の2021年度の調査によれば、ひとり親世帯の養育費受領率は26.4%(母子世帯28.1%、父子世帯8.7%)です。2011年の民法改正で離婚時に夫婦が取り決める事項として、養育費の分担が明記されましたが、実際に取り決めた母子世帯は46.7%で、父子世帯は28.3%にとどまっています。養育費を受け取っているひとり親世帯は3割に満たず、国は、養育費受領率を2031年に40%に引き上げる目標を掲げています。

 男女共同参画白書によれば、母子世帯の年間収入は平均236万円です。ひとり親世帯の貧困率は44.5%で、OECD加盟36カ国中で5番目に高くなっています。家庭内暴力や児童虐待などが離婚理由の場合、離婚時に養育費の支払いを決められないことがあります。一方が非協力的だったり、資金力が不足していたりする家庭も少なくありません。

 離婚相手から養育費の支払いがないひとり親世帯の支援に自治体が乗り出しています。養育費を立て替えて離婚相手に督促したり、養育費を取り決める公正証書の作成費用を補助したりする取り組みです。しかし、自治体の支援にも濃淡があり、住んでいる地域によって格差が生じる可能性もあります。

 他の先進国では、政府機関が養育費の立て替えや取り立てを担当している国が少なくありません。ひとり親は仕事や育児に追われ、養育費お不払いに対応できる時間がありません。国レベルで立て替えや回収を担う機関を設立することも検討すべきです。

(2024年10月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です