iPS細胞の作製発表から19年が経過しました。iPS細胞を使った細胞治療は、2014年に理化学研究所などの研究チームが、目の病気の患者に移植する臨床研究を世界で初めて実施しました。その後も重い心不全や、目の角膜、脊髄損傷などの患者へ移植されてきました。

iPS細胞を使った細胞治療で、4月以降に動きが相次いでいます。京都大学のパーキンソン病治療の治験結果が公表されました。大阪大学の心筋シートとともに、iPS細胞を使った細胞治療のトップランナーとして、世界初となる実用化に向けた最終段階に入っています。
大阪大学発のベンチャーであるクオリプスは、重い心不全治療で使う心筋シートについて、再生医療製品として世界で初となる製造販売承認の申請を厚生労働省に提出しています。iPS細胞から心臓の筋肉の細胞をつくり、それをシート状にして心臓に貼ることにより、心筋シートも心臓のように拍動します。シートから分泌される物質が、心臓の血管を新たにつくると期待されています。
京都大学のチームが公表したパーキンソン病の治験では、住友ファーマが承認申請の準備をしています。早ければ申請から半年で早期承認を得られる可能性があります。国の条件・期限付きの早期承認制度での承認を目指しています。少数例の治験で安全の確認や有効性の推定ができれば、本承認の前に仮免許を与える制度です。販売をしながら最長7年をかけて検証を続け、本承認を目指します。
再生医療を患者に早く届けるために設けられた制度ですが、本承認に至らなかったケースもあります。あくまでも本承認がゴールです。早期承認時の見通しが緩すぎると、本承認までのハードルが高くなってしまい、制度がうまく機能しなくなる可能性もあります。

(2025年4月17日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)