医師の地方開業の支援

 医師が80歳で引退すると仮定した場合、2040年時点で診療所がない市区町村は244と2022年から170ほど増えることになります。75歳で引退すると仮定すれば、およそ270増え342になります。急速な少子高齢化などで地方の人口構造は変わり、離島などの僻地ではない自治体でも医療サービスの継続が危ぶまれています。

 このため厚生労働省は、医師が都市に偏在する状況を是正するため、地方での開業を支援する経費を2026年度予算の概算要求に盛り込んでいます。建屋や医療機器などの整備費を都道府県とともに半額補助するほか、診療日数に応じて運営経費の3分の2を一定期間出して定着を促します。開設時の登録免許税や不動産取得税と、その後の一定期間の固定資産税、都市計画税を軽くして、不動産関連の参入コストの引き下げを狙っています。

 今回の厚生労働省の要求は、補助金と税負担の軽減で重複感もあります。初期コストから一定期間の運用コストまで公費で多くを賄うことになります。過剰支援にならないかの精査が必要となります。定着効果があるか、医療資源の選択と集中を妨げないかなどの検証が大切です。

(2025年9月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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