人工網膜による加齢黄斑変性の治療

 欧米の研究チームの発表によれば、視力が低下する加齢黄斑変性の患者に、人工網膜の技術を使うことで、1年後に文字が読めるようになっています。加齢黄斑変性は、視神経が集まる黄斑部の細胞が失われ、視野の中心が欠けたりします。失明の原因になる病気で、注射で進行を遅らせることはできますが、視力を改善させる方法はありません。世界で500万人の患者がいるとされています。わが国でもiPS細胞を使用した臨床試験が実施されています。

 人工網膜は、視細胞が失われた患者の網膜にデバイスを入れ、目の中に残っている細胞に電気的な刺激を与え、脳に信号を送る仕組みです。今回の臨床試験は、米スタンフォード大で開発されたPRIMAという装置を使用しています。患者に2㎜四方のチップを移植し、装着した特殊なめがねに取り付けたカメラで撮影した画像が、赤外線によりチップに伝わり、電気刺激に変換され、白黒の情報が認識されます。

 視力が落ちている60歳以上の患者に移植し、1年後に視力を評価すると、明るさやズームで見え方の調整が必要ですが、32人のうち26人で一定の視力改善が確認されています。27人が文字や数字、単語を読むことができるようになっています。参加した半数の眼圧の上昇や網膜下の出血などがありましたが、全員が2カ月以内に回復しています。

(2025年10月21日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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