STAP細胞論文問題や医薬品の臨床研究データ改ざんなどを契機に、大学や企業では研究不正の防止策を検討しています。薬事法違反に相当する問題は研究者や所属機関が罰せられる恐れがあるうえ、研究不正に対する社会的な関心の高まりで、組織全体の信用失墜のリスクも増すことになります。東大では、ここ数年、産業への応用が期待されるバイオ分野を含めた研究論文の捏造などの不正が次々に発覚しています。対策として3月に研究倫理アクションプランをまとめています。
不正防止のためには、研究倫理に対する教育と啓発が大切です。罰則だけでしばると研究者が委縮して自由な研究が限定されることになります。企業と薬の安全性に直接関わる臨床研究の支援部門が、癒着しにくい組織にする必要があります。不正を未然に防止することが狙いです。臨床研究を委託する大学などと契約に基づいて、あらかじめ資金の使途や相互の責任分担などを明確にしておくことが大切になります。
(2014年11月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)