AI内視鏡による胃がん

 胃がんは早期に発見できれば、簡単に切除できるため、他のがんと比べても治療の成功率は高く、初期段階で切除できれば、5年後の生存率は95%以上です。しかし、リンパ節に転移があるような状況に進行すると、5年後の生存率は60~70%まで下がります。

 しかし、早期の胃がんを発見するのは簡単ではなく、内視鏡を使った画像検査でも、いぼ状のポリープなのか、がん細胞などかを見分けるには熟練の技術が必要となります。がん細胞と判断に迷うケースもあります。疑わしい病変の発見やその判別に時間と労力がかかるため、医師の負担も多くなっています。胃がんの早期発見に役立つ内視鏡検査が、AIの登場で急速に進化しています。病変の見落としを防ぐだけでなく、医師の負担軽減にも一役買っています。

 AIを活用した検査では、胃や大腸などの消化器系のほか、胸部X線やCTなどによる呼吸器系の異常を見つける検査でも実用化が進んでいます。医師の診断を手助けするサポート役として、今後さらに多くの医療検査に普及していくことが期待されています。

 しかし、現時点ではあくまで医師の判断を支援するためのツールであり、診断という人間の命にかかわる重要な判断は、医師が行う点には変わりはありません。AIは精度の問題も含めて技術的には発展途上にあり、過剰な期待は禁物です。

(2025年11月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です