子ども期の逆境体験の影響

 虐待やネグレクトなど、18歳までの子どもにとってトラウマとなりうるような体験を、子ども期の逆境体験(ACE=Adverse Childhood Experiences)と呼びます。ACEは、身体的、心理的、性的虐待やネグレクト、家族の精神疾患や自殺未遂、薬物・アルコール乱用など主に10項目があります。

 全くACEを経験していない人に比べ、経験した数が多いほど、大人になってから心身の健康上のリスクが高まり、失業や貧困、社会的孤立などの困難に直面しやすいことが明らかになっています。1990年代の米国の研究では、ACEを四つ以上経験した人は、経験がない人に比べて、がんが1.9倍、アルコール依存が7.4倍、希死念慮が12.2倍リスクがあるとされています。2021年に京都大学が行った調査によれば、一つ以上経験したACEサバイバーが38.4%いることが明らかになっています。ACEを経験した数が多い人ほど、心身の不調を抱えやすくなっています。

 国内の複数の調査から、四つ以上あてはまる特にリスクの高いACE サバイバーは、国内におよそ440万人いると推計されています。ACEサバイバーが抱えるトラウマや困難については、理解や支援が足りていないのが現状です。虐待や逆境体験は、子ども時代で終わるものではなく、大人になっても影響が続くことがあります。逆境を生き延びた人たちが孤立せず、適切な支援が広がることが期待されます。

(2025年11月8日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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