無痛分娩のニーズの高まり

 無痛分娩は脊髄を保護する硬膜の外側に細い管を入れ、麻酔薬を注入する硬膜外麻酔が主流です。麻酔を担当する産科医や麻酔科医が陣痛に備え、24時間態勢で対応できる医療機関は限られます。このため出産日をあらかじめ決め、陣痛を誘発して計画的に分娩することが一般的です。

 無痛分娩の最大のメリットは、お産の痛みが軽くなることです。体力を温存でき産後の回復が早かった、リラックスしてお産に臨めたとの感想も多く、高血圧や心臓に持病がある妊婦には、痛みの負担を軽くすることができます。リスクもあります。副作用などとして、分娩中の痒みや発熱、頭痛も起きることがあります。血液中の麻酔薬の濃度が高くなり、痺れやめまい、耳鳴り、不整脈などの合併症もごくまれにあります。

 全国的に無痛分娩の需要は高まっています。日本産婦人科医会の調査では、総分娩数に占める無痛分娩の割合は、2017年は5.2%でしたが、2023年には13.8%で年々増加傾向にあります。都道府県別にみると、2023年は、東京が31.2%、神奈川が23.0%の一方、新潟が2.5%、高知・岩手はゼロで、地域的な偏りがあります。無痛分娩を手掛ける医療機関は増えていますが、ニーズに追いついていません。国内では慢性的に麻酔科医不足し、産科が専門の麻酔科医はさらに少ないことが背景にあります。

 少子化による出産数の減少や医師の高齢化などで、お産をやめる病院やクリニックも相次いでいます。高まる無痛分娩のニーズに対応できない医療機関が、お産を続けられずに撤退して集約化がさらに進むことも考えられます。

(2025年11月9日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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