イプスが2025年に実施した国際世論調査によれば、今後1年程度で自分の生活水準が上がりそうだと答えた日本の国民は10%にとどまり、主要30カ国の最低を記録しています。下がりそうだという回答は38%で、トルコ、フランスに次ぐ3番目の高水準です。日本経済は、所得の増加が物価の上昇に追いつかず、生活苦にあえぐ人々は少なくありません。税や社会保険料の軽減を望む声が強まるのはやむを得ません。
日本の国民負担率(国民所得に対する税・社会保険料の負担比率)は、2025年度見通しで46%強で、2022年(日本は年度)の国際比較では、主要36カ国の24位に相当しており、突出して高いわけではありません。問題は負担と給付のバランスです。
日本の低所得層(年収約326万円)と高所得層(年収約2,170万円)の純負担率は、それぞれ9%強、28%弱です。先進13カ国の同じ程度の所得階層と比べると、低所得層は最も高く、高所得層は最も低くなっています。貧困層に支援が行き届いていないという点で、所得再分配の機能が他国より弱くなっています。負担と給付の歪みに苦しむ貧困層は、子持ちの共働き世帯に限らず、現役世代には社会保障の恩恵を受ける高齢者と違って、負担が大きい割に給付が乏しいという不満もあります。
現在のような低成長期やゼロ成長期に、税・社会保険料の負担増を所得増で吸収するのは、高成長期ほど容易ではありません。負担と給付をセットで提案し、集めた税を公的なサービスで還元するという姿勢を示さないと、国民の理解を得られない時代になってきています。年金・医療・介護の効率化、教育・就労・育児の支援拡充、富裕層の所得や資産への課税強化が必要になります。

(2026年1月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)





