ニパウイルスは、南アジアや東アジアの熱帯雨林などに生息するオオコウモリの体内にいます。動物や人に感染する人獣共通感染症の一つで、ブタやウマから人にも感染します。人から人への感染は稀ですが、患者の血液などに触れることで感染することもあります。発熱や筋肉痛などから始まり、重症化すると意識障害などを伴い脳炎を発症することもあります。致死率は40~75%と推定されています。
WHOによると、インド西ベンガル州で、2025年12月に2人が発症し入院しました。日本国内の発生はこれまで確認されていません。インフルエンザやコロナのように、人の間で感染が拡大していくようなウイルスとは異なり、日本での流行をすぐに心配する状況ではありません。
このウイルスに特化した薬やワクチンはありませんが、ニパウイルス感染症の発症を防ぐワクチンの開発が、東京大学などで進んでいます。ワクチンは、弱毒化した麻疹ウイルスにニパウイルスの遺伝子を組み込むウイルスベクターワクチンです。体内で、ニパウイルスの一部のたんぱく質が作られ、免疫反応を起こします。2013年にはサルで効果を確認しましたが、途上国向けで利益が期待できない製品開発に協力する製薬会社は見つかりませんでした。この4月よりベルギーで臨床試験を始める予定です。

(2026年2月15日 朝日新聞社)
(吉村 やすのり)





