不妊で悩むカップルをみると、どうしても女性に問題があるのではないかと思われてしまうことが多いようですが、実は4割以上は男性に原因があります。まずはじめにこの事実を知って頂きたいと思います。男性の検査は、精液を採取するだけで診断ができることが多く、痛みもありません。よって、女性の検査よりも先に男性が検査を行うべきです。
男性不妊の原因には大きく3つあります。①精子を製造する能力に問題がある場合(造精機能障害)、②生み出された精子が、ペニスの先まで運ばれない場合(精路通過障害)、③セックスがうまくできない場合(性機能障害)です。①が約80%と最も多いのです。なぜ健康な精子が作られないのか、約6割が原因不明です。造精機能障害のうち原因がはっきりしているものに、精索静脈瘤がありますが、手術によって精子の数や運動率に改善がみられ、妊娠率が上昇するという報告が多数みられます。顕微授精を施行する症例でも、男性の精索静脈瘤手術を行うと妊娠率が45%から60%に上昇したという報告があります。その他、無精子症の場合は、陰嚢を0.5~1㎝切開して精子をとる手術を行い、採取された精子を用いて顕微授精が行われます。精子回収率は30~40%で、妊娠例も多く報告されるようになってきました。セックスができない場合については、バックナンバー「妊娠のための教育講座Ⅳセックスレス」をご参照ください。
大事なポイントをお伝えします。男性に原因があることから目を逸らさないでいただきたいのです。一般に不妊の原因が男性にあることを受け止めるということは、女性不妊以上につらいものだとされています。治療に気の進まない気持ちもわかりますが、先延ばしにしているうちにパートナーの女性の年齢が上がり、妊娠率が低下していきます。不妊治療を女性任せにせず、2人で診療を受けること、常にパートナーと話し合って進めていくことが大切だと思います。
(吉村 やすのり)