内密出産は、慈恵病院に続き、2025年に東京都墨田区の賛育会病院が受け入れを始めています。泉佐野市は、2026年度中にりんくう総合医療センターで運用を始める予定です。内密出産を望む女性は親など周囲に頼れず、孤立する女性が大半です。厳しい家庭・経済環境におかれた人も多く見られます。

内密出産を規定する法律は無く、厚生労働省と法務省は、2022年9月に慈恵病院や熊本市などの要請を受けて初のガイドラインを策定しています。病院側に女性の身元情報の保存を求め、地方自治体が戸籍を作成できるなどと明示しています。ガイドラインでは内密出産を推奨するものではないと記しています。育児放棄を助長するなどといった批判があることに配慮したとみられます。
ガイドラインを作っても解決できない課題は多く、①出自を知る権利の担保、②病院の負担軽減、③出自を知る権利と女性の匿名性の両立などが指摘されています。慈恵病院では、出産や滞在にかかる費用を病院側で負担しています。民間の病院は倒産する可能性もあります。個人情報である出生に関わる情報を、民間病院が長期にわたって管理するのは適切ではないとの指摘もあります。
内密出産は健診無しの出産の可能性もあるため、母体のリスクも伴います。行政の相談窓口と医療側との新たな連携関係も求められます。こども家庭庁によれば、心中以外の虐待で死亡した0歳児の半数近くは、出生したその日に命を落としています。韓国やドイツのように、一日も早く内密出産の法制化が望まれます。

(2026年5月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)





