一般的な無痛分娩は脊髄を保護する硬膜の外側に細い管を入れ、麻酔薬を注入して分娩の痛みを和らげます。日本産婦人科医会の調査によれば、総分娩数が減り続ける一方で、無痛分娩の件数は増え続けており、2024年は全分娩に占める無痛分娩の比率は16%超となっています。

2024年に産後の女性に聞いた調査によれば、6割超が無痛分娩を希望していたものの、実際に利用したのは35.8%でした。無痛分娩を希望したが実施に至らなかった理由は、費用が高いが33%で、帝王切開などになったの43%に続いて多くなっています。
都は少子化対策の一環として、昨年10月から全国の都道府県では初めて無痛分娩利用者に、最大10万円の助成を始めました。助成金の申請は3月末までの半年間で約1万2千件に達し、2023年の都内の無痛分娩数にあたる約1万9千件を上回りそうです。助成対象の医療機関は4月時点で128施設になっています。
無痛分娩の麻酔担当者は産婦人科医が過半数を占め、麻酔科医の約37%を上回っています。厚生労働省の許可を受けた麻酔科標榜医を持つ産婦人科医は1割で、無痛分娩のニーズに、提供体制が追いついていません。麻酔を担当する産科医や麻酔科医が陣痛に備えて24時間体制で対応する医療機関は限られ、出産日を決めて陣痛を誘発する計画分娩が6割超を占めています。

出産の痛みを麻酔で和らげる無痛分娩について、東京都が全国の都道府県では初めて最大10万円の費用助成を開始してから7カ月が過ぎました。ニーズが高まる一方、産科専門の麻酔科医が管理する医療施設が少ないなど課題は多く、異変を発見し対応できる医療体制づくりが急がれます。無痛分娩の実施状況は施設ごとに異なるため、信頼できる情報をもとに急変事態でも対応力がある施設を選ぶことが必要です。

(2026年5月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)





