日本産科婦人科学会は13日、理事会を開き、体外受精させて受精卵のすべての染色体を調べ、異常のないものを子宮に戻す「着床前スクリーニング」の臨床研究の実施計画案を承認した。妊娠年齢が高くなり、不妊治療をしても出産に至らないケースが増えています。染色体の異常が流産の主たる原因と考えられています。臨床研究は、受精卵を調べ、異常がないものだけを医学的に子宮に戻すことで、妊娠の可能性を高めたり、流産を減らしたりできるかどうかを検証するものです。体外受精を3回以上失敗したり、流産を2回以上経験した女性が対象となります。600人を着床前スクリーニングを行う群と行わない群に分け、妊娠率や流産率の差を調べることとしています。
新聞は、学会が受精卵診断の対象を拡大したと一斉に報道しています。これは正しくありません。着床前スクリーニングが、妊娠成功率の上昇や流産防止に役立つかどうかを、新しい診断技術「アレイCGH」を用いて純粋に医学的に検証する臨床研究です。これらの方法をすぐに臨床応用することを決定したのではありません。臨床研究の結果、もし医学的有用性が認められたのであれば、着床前スクリーニングの社会的、倫理的諸問題について本格的な国民的議論をすることにしています。医学的有用性がなければ、着床前スクリーニングは行うべきではありません。
(吉村 やすのり)