がん治療薬の高額化

 がん医療の向上を理念に掲げたがん対策基本法が、2006年6月に成立して20年を迎えています。薬物治療の進歩などによって、がん患者の生存率は高まってきています。従来の抗がん剤を中心とした薬物治療では、進行すると長期の生存は困難でした。この20年でがん細胞を狙い撃ちする分子標的薬が次々と承認され、2014年には免疫の攻撃力を回復させる免疫チェックポイント阻害薬が登場し、人によっては5年以上がんが消失しています。治療が難しかったがんが治るケースが出てきています。

 新たにがんと診断される人は全国で年約99万人いる中、生存率は多くのがんで向上してきています。厚生労働省などによれば、男性の肺がんの5年生存率では、2003~205年に診断を受けた人は24.8%で、2018年に診断された人は34.8%となり、薬物治療の進歩により、さらに伸長すると思われます。

 一方で、新しい治療薬は高額化しています。10年前免疫チェックポイント阻害薬を肺がんで使うと、1人あたり年約3500万円かかると話題となりました。免疫細胞を遺伝子操作する血液がん患者向けの製品は、1回約3300万円かかります。高額な薬剤が多くの患者に使われることで医療費の増大につながっています。患者の自己負担を低く抑える高額療養費制度はあるものの、治療が数年間にわたって長期に負担しなければなりません。厚生労働省は、8月に高額療養費制度の患者負担の上限を引き上げ、自己負担は増す見通しです。

(2026年6月29日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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