障害者の法定雇用率の運用見直し

 2026年は、障害者雇用が義務化されてから50年という節目の年です。当初、常用労働者のうち雇用しなければならない障害者の割合である法定雇用率は1.5%で、対象も身体障害者に限られていました。その後、知的障害・精神障害へ対象が広がり、本年7月に法定雇用率が2.7%に引き上げられます。義務化を定めた障害者雇用促進法には罰則はありませんが、雇用率の未達成を放置していると企業名が公表されます。

 解消法の理念が示すように、障害者手帳の有無に関係なく、多様な人材を適所で活躍させる人事を行っていけば、おのずと誰もが働きやすい職場が形成され、障害という定義が意味をなさなくなります障害者雇用にも時間軸を伴った経営戦略があってしかるべきです。障害者雇用にかかる人件費や配慮をコストとみなすならば、それに対する収入は業務の遂行によって生まれた収益や、雇用率達成によるブランド価値の維持などが挙げられます。

 日本は今後長期にわたり労働力不足の状態に置かれています。外国人労働力への需要は増えています。しかし、働きたくても働けない人たちが国内に600万人もおり、その中にかなりの数の精神・発達障害の当事者が含まれています。法的雇用を無理強いすれば、企業収入益に見合わない不適切な雇用形態につながりかねません。法定雇用率を定めるなら身体・知的障害の当事者に限定すべきと思われます。精神・発達障害は、解消法の理念にのっとり、多様で柔軟な働き方への転換を通じて雇用を増やすよう働きかけていくべきです。

 企業も目先の数合わせではなく、将来的なリターンを前提とした中長期的視点から障害者雇用をとらえ直すことが必要です。障害者雇用は特定の人たちを対象とした特別な雇用形態ではありません。それを一般化することで、社会の全体最適の実現へ向けた一歩となることが期待されます。

(2026年6月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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