不妊治療が普及する中、妻が夫に無断で治療を進めて出産し、訴訟に発展するケースが出てきています。保険適用で不妊治療を行う場合、精子は夫のものに限られ、病院内で採取することが多いとされています。しかし、夫の来院が難しかったり、病院での採取に抵抗感があったりする場合、妻が精子を病院に持ち込んで治療を受けることも少なくありません。この際、トラブルが起きやすくなっています。
別居中の妻が第三者の精子を夫のものだと偽って体外受精し、出産したのは、病院の同意確認が不十分だったためだとして、夫だった京都市内の男性が、3月に病院側に慰謝料などを求め京都地裁に提訴しています。
不妊治療時、医療機関による夫への同意確認の方法について法令の定めはありません。日本産科婦人科学会の指針では、医療機関に対し、不妊治療の実施時に夫婦双方の同意を書面で確認するよう明示していますが、対面や電話のやり取りまでは求めていません。夫の同意を巡り、家族間でも多くの訴訟が起きています。
悪意を持って同意書を偽造されたり、第三者の精子を夫のものと偽られたりした場合は見破るのは困難です。各医療施設と患者との医療行為にかかわる問題については、学術団体が介入や所見を述べるものではありません。子どもの権利や医療機関を訴訟から守るためにも、同意を確認する手法や時期などについて、国が指針を定める時期にきています。
(2026年7月24日 読売新聞)
(吉村 やすのり)







