基幹的農業従事者の高齢化と数の減少により、わが国の農地面積は田畑ともに減少しています。日本の農業が危機と言われる背景は、担い手の急減と高齢化です。農業従事者の減少にともない、食料自給率は、生産額ベース、供給熱量ベースともに減少しています。気候変動や国際情勢の不安定の中で、自国内で確保できる食料が少ないことは、大きな安全保障上の課題とされています。
食料安全保障とは、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、国民一人一人がこれを入手できる状態を指します。食料供給は、国内の生産と輸入、非常時の蓄えで構成されます。現在の日本の状況では、四つの懸念が考えられます。第一に、輸入による食料供給に問題があります。世界の食料価格は高騰しています。気候変動の影響で収量は不安定になり、国際政治の不確実性も増しています。
第二には、国内生産による供給に懸念があります。人口減少で農業の担い手が確保できず、農業生産の継続が困難になることが考えられます。第三に、輸入が途絶するなど非常時に食料配給面での課題です。最後に、平常時でも経済的理由で食べ物が手に入らない人が増えています。店が遠い、交通手段が確保できないなどの地理的条件で、食料アクセスが困難な人も増加してきています。
当面は、高齢者が支える今の農業の維持が必要です。中期的には人と農地の再構成へと着実に備えねばなりません。スマート農業の導入支援や機械の共同利用によるコスト低減が必要になります。また新規就農者や企業参入を後押しする制度や研修も大切となります。農薬をドローンでまくなど、地域単位でのテクノロジーの導入も必須です。

(2026年7月28日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)





