政府は、人口減対策と地方創生の方針となる長期ビジョンと、2020年までの施策を盛り込んだ総合戦略で、1人の女性が生涯に産むと見込まれる子どもの数である合計特殊出生率を1.8まで引き上げることがまず目指すべき水準と明記し、2030年に達成するという原案をまとめた。政府が目標に掲げる50年後に総人口1億人が確保される出生率の推計として、2040年に2.07を目指したいとの意向を示した。政府は出生率を数値目標とは位置づけていないが、達成水準を数値で示すことは有識者から出産の押しつけといった指摘もあり、議論を呼ぶことも予想される。
しかしながら、若い男女が希望する子どもの数は2人であり、若い世代の結婚・子育ての希望が実現すれば、1.8程度の水準まで向上することが見込まれる。人口が減少しない人口置換水準は2.07であり、この基準までに到達する道のりは果てしなく遠い。こうした議論があると、必ず国が女性に子どもを生むことを強要しているとの意見がでてくるが、現状の急激に進行する少子化を考えると、国としても緊急の対策が必要となる。結婚や出産は個人の自由な決定に基づくもので、個々人の決定にプレッシャーを与えるようなことがあってはならないことを明記すべきである。
(吉村 やすのり)