東京電力福島第一原子力発電所事故による放射線の健康への影響や健康管理の在り方を検討している環境省の専門家会議は、23日までに中間報告書をまとめています。その専門家会議は、今後甲状腺がんが増えるかどうか、がんを発症していない人との比較、甲状腺がんと被曝との関連を分析できるような疫学追跡調査を充実させるべきだとしています。国は対象者に負担がないよう配慮し、福島県外に出た場合も継続的な検査ができるように、福島県を支援するべきだとしています。
原発事故との因果関係については、チェルノブイリ原発事故後、子どもに甲状腺がん発症の増加が見られたとの調査結果があります。今回の報告書では、現時点で甲状腺がんの発症は事故の影響とは考えられないとの判断をしています。これまでの調査の対象は、事故当時18歳以下の未成年者に加え、事故後一年間に生まれた子どもも含まれています。低線量であっても放射線の内部被曝が、次世代に影響を与えることも否定はできません。そのため被曝した母体から生まれた子どもの検証も大切です。がんと被曝との関連性の検証は、原発事故を経験したわが国でしかできないことであり、適切な分析ができるような調査体制を充実させることが大切です。
(吉村 やすのり)