47都道府県のうち19道府県は、合計特殊出生率や出生数について、すでに何らかの目標を決めています。政府や自治体が公的な出生率に関する目標を掲げることについては、「戦時下の産めよ、殖やせよを想起させる」「女性に対して産むことを強制する圧力になる」といった理由で、女性有識者の中には批判的な声が根強くあります。今年5月には内閣府の有識者会議で目標が設定されたが、慎重論があり、見送られたといった経緯もあります。しかし、若いカップルが希望する子どもの数は2人以上です。
自治体の出生率目標は、国に一歩先行する形で広がっています。一方で、「出生率はセンシティブな問題」「個人の生き方に介入すべきではない」などの理由で、設定を見送っている自治体もあり、対応は割れています。いずれにしても個人の考え方や価値観が尊重されることが大前提で、目標は個人に対するものではないという趣旨を明確にすることが大切です。出生率などの目標を達成しても、多くの若者が都市部に流出する流れを変えない限り、地方の人口減を食い止めることは困難です。国も50年後の1億人の人口維持を目指す長期ビジョンで、出生率1.8という目指すべき水準の数値目標は削除する方向です。
(2014年12月26日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)