明治神宮の森の歴史は、103年前の1912年、明治天皇の逝去に始まります。明治天皇を祀る神社を建てることになり、多くの候補地の中から、現在の明治神宮内苑となる代々木御料地が選ばれました。その一部は、江戸時代に大名屋敷があった場所で、広葉樹の林やわき水があり、明治天皇、昭憲皇太后とともに訪れた、ゆかりの深い地でした。現在神宮の中には昭憲皇太后がよく休息され御苑があり、初夏には花菖蒲秋には紅葉を楽しむことができます。しかし、当時豊かな緑があったのはごく一部であり、約70ヘクタールの神社内苑の大半は草地の広がる荒地でした。
荒地に大きな森を造る計画が立てられ、全国から約10万本が献木されたそうです。明治神宮の東側に沿って敷かれている線路(おそらく今の山手線)で、蒸気機関車に乗せられて次々と運ばれてきたそうです。明治神宮はこうして出来た人工の森です。常緑広葉樹が最も多く、ついで落葉広葉樹、スギなどの針葉樹が少ないのが特徴です。落ちた葉や枝はすべて森の土に戻すという徹底した管理がなされており、土壌が肥沃になり、素晴らしい森が形成されています。時折散歩させて頂いていますが、静寂で夏は涼しく、冬は寒さが和らぐ憩いの場所です。散歩のたびに新しい発見があるのもこの森の特徴です。
(吉村 やすのり)