高齢者からの若い世代への資産の移転を目的に2013年に教育資金の贈与支援策が始まった。信託銀行などに口座を作り、孫の教育資金を祖父母が贈与すると、孫1人1500万円まで贈与税がかからないという制度である。今のところ今年末までだが、信託協会によれば契約額は2014年11月末に累計6500億円超で、信託銀行を利用しなかった中堅所得層が新たに口座を作っているとのことである。契約1件当たりの金額は700万円弱と非課税枠の半分以下ですが、教育資金贈与信託をきっかけに贈与を考え始める人が多く、新たな贈与を生み出す力になっているようである。高齢化が進み、今や親の財産を相続する人は50代で、住宅ローンや教育費で家計が一番苦しい30~40代に資産が渡らない。高齢者が子や孫のためにお金を使えば経済効果があがりそうだ。
しかしながら、税制で贈与を優遇すれば、貧富の格差が定着し拡大してしまうことが指摘されている。また富裕層ほど貯蓄を積み増す傾向が強く、贈与してもすぐに使われない資金は、当面貯蓄されることが多く、景気刺激効果は限定的であるとも考えられている。特に教育資金目的の贈与税軽減は教育格差拡大につながり、低所得層の子ども向けの奨学金を充実するほうが望ましいとも考えられている。
(2015年1月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)