わが国では、妊娠中は体重の増えすぎで妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病にならないよう栄養指導に力を入れてきました。しかし、最近必要なエネルギー摂取をしない妊婦が増えてきています。20代女性の1日あたりの平均エネルギー摂取量は1600キロカロリー前後であり、厚生労働省の食事摂取基準が定める普通の身体の活動レベルの推定エネルギー必要量である1950キロカロリーを大きく下回っています。女性のやせ願望もエネルギー摂取不足の一因です。
やせ願望の強い妊娠前の食習慣が妊娠中も続く結果、低栄養の妊婦が多くなります。年々妊婦の摂取量は減少してきています。妊婦が栄養不足だと新生児の体重も低くなります。2500グラム未満で生まれた子どもの割合は2013年に9.6%であり、食糧不足だった終戦直後と比べても3割高い値です。出生児の体重が低いと、将来生活習慣病リスクが高まる可能性があり、妊娠期の食の大切さが見直されています。
(2015年1月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)