樹木の生命力の凄さ

長崎には講演で出かける機会が多い。訪れた際、長崎県内の観光名所を訪れた際、樹木の生命力の凄さを示す2つの出来事に圧倒された。1つは長崎市内の山王神社の被曝楠(クスノキ)である。山王神社は旧浦士街道沿いの静寂な一角にあり、原爆による爆風によって半分を吹き飛ばされたこの鳥居が有名である。その鳥居の脇に樹齢400500年以上といわれる2本の楠がある。高さは20mを超え、幹回りは8mもある。原爆で枝葉を全部吹き飛ばされ、裸同然となり、黒焦げとなった時大きく裂け、当然のごとく生存は危ぶまれたが、現在見事に樹勢を取り戻している。去年樹医がその楠の治療にあたっている。

 もう1つは南島原市の大野木場小学校にあった銀杏の樹である。平成3915日の雲仙普賢岳の大規模火砕流により、熱風の直撃を受け校舎は炎上した。現在も校舎の原型をとどめており、遺構として保存されているが、私が注目したのはその校庭の片隅にあった銀杏の大木である。小学校を訪れた時、当時の樹を写真でみると、その銀杏の樹は火砕流によって大幹だけになり、枯木同然となっていた。しかし20年後私が訪れた時、ものの見事に蘇っていた。

 山王神社の楠といい、大野木場小学校の銀杏といい、樹木の生命力の強さを示す事象である。自然の力とは凄いものである。

(吉村 やすのり)

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