日本の病院は基本的に国内の患者を対象としています。その医療費は公的医療保険制度を通して支払われていますが、財政難でその支払いは、大変厳しい状況になっています。今後日本の人口は減り、当然のことながら患者も減ります。世界の国々では、すでに年600万人を超える患者が国境を超えており、医療を産業としてとらえ、政府と民間病院が一体となった患者の獲得合戦が激しくなってきています。アジア各国は、医療を外貨獲得のための産業と位置付けています。
2012年度に医療を受ける目的で来日した外国人は、3万人弱です。長期の滞在を認める医療滞在ビザが2011年に導入されましたが、2013年の発給件数は299件にとどまっており、通常の短期滞在ビザなどで訪日して治療を受ける人が多いのが現状です。アジアの国々ではビザの緩和など国を挙げて外国人患者を呼び込んでいます。経産省が中国やロシア、インドネシアなどの人々を対象に実施したアンケートによれば、日本の医療を利用してみたいと答えた割合は、6~8割と高い状況にあります。その理由は日本の医療技術が高いことによります。しかし一方で、医療費が高いことも問題となっており、タイやシンガポールなどのアジア諸国より外国人の患者数は低い状況にあります。
(2015年1月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)