現在、わが国における子宮頸がんのピークは30歳代後半です。20代や30代の女性に最も頻度の高いがんは子宮頸がんです。妊娠を希望する女性や、妊娠している女性に子宮頸がんが見つかることが大変多くなり、いかにして妊孕能を温存するかが大きな問題となっています。
極めて初期の浸潤がんには子宮頸部の円錐切除が行われ、良好な治療成績が得られています。この場合は、子宮頸部の一部だけを切り取るので、後の妊娠には影響を与えません。それより進んだ子宮頸がんには、広汎子宮全摘出術が行われ、子宮を全摘するため、手術後妊娠を希望することはできません。向井亜紀さんのケースもこれにあたります。
最近では、妊孕能を温存する手術として、広汎性頸部切除術が行われるようになってきています。子宮頸部は広範囲に切り取りますが、子宮体部は残るため、手術後妊娠することは可能です。これにより、良好ながんの治療成績のみならず、数多くの妊娠例が得られるようになってきており、妊娠を希望する若い女性にとっては極めて有用な手術です。しかし、妊娠のためには多くの場合、体外受精を用いらなければなりません。また、妊娠中は早産が多く、入院が必要になります。
子宮頸がんは、ほとんどが発がん性ヒトパピローマウィルス(HPV)の感染が原因となっておこります。現在では子宮頸がん予防のためのHPVワクチンが開発され、12~14才の女児に公的助成も認められています。ワクチンを接種してもすべての子宮頸がんを予防できるわけではありません。20才を過ぎたら定期的に子宮頸がん検診を受けることが大切です。
(吉村やすのり)